今回はARC’TERYXのジャケット、ZETA Slを紹介しよう。
このZETA Slを実際着用してみて、良かった点や今ひとつだった部分を紹介していく。
尚、ZETA SLジャケットは様々なメディアやブログ記事、動画等で良い所ばかりが紹介されている感じがしている。
当然良いプロダクトであることは間違いないが、今日は良い面と合わせ弱点もしっかりこの記事で伝えていきたい。
ARC’TERYX BETA SL ジャケット 基本情報
アークテリクスのシェルとして大定番のZETA Sl。
価格は44,000円。通年の使用回数を考慮すれば、まずまずの価格帯と言えるかもしれない。
重量は 310gでとにかく重さを感じない。
羽織っていても全くストレスは無く、コンパクトに折りたため持ち運びも容易なので、街や山での急な環境変化に心強い1着だ。
表面の仕様としては2.5層ゴアテックスファブリックを使用している。
3層は表面ファブリック、ゴアテックスメンブレン、裏面ファブリックといった具合で3層構造になっている物を指す。
これに対し2層、2.5層と言われる仕様は表面ファブリックとゴアテックスは変わらず、裏地をコーティングしている仕様を指す。
その為、一般的に3層より劣化が早いと言われる。
剥離が起こる可能性は高くなるデメリットの代わりに、軽量化できるというメリットがある。このZETA SLは軽量化に重きを置かれているタイプだ。
裏地の仕様はパックライトプラスという素材を採用しており、油分を弾き肌へ接地した際の不快感を軽減してくれる。
尚且つ肌離れが良く、着心地と軽量性が重視された素材である為、ストレス無く着用することが出来る。
2.5層ではあるが、こういった部分も数年おきに改善されている部分である。
以前購入したBETA LTと同様に、今回もXSサイズを選んでみた。XSだとややデコルテ辺りがタイトな印象を受けた。
しかし個人的な用途としてミッドレイヤーを着用して活用するのではなく、春や秋の少し肌寒い時期に上着として着用しようと思ったため、ジャストサイズを選んでみた。
加えてSの場合、腕周りが膨らんで見え野暮ったくなった為、そういった部分もスマートに着こなせるイメージを受け、このサイズの決め手となった。
因みに身長は171cm、体重は58kgで細身の体型をしている。THE NORTH FACEのクライムライトジャケットはMサイズでジャストな為、本当に各メーカーにより適正サイズが異なるのがわかる。5年以上使えるプロダクトなので、試着は必須。
今回の色はグレーに近いCryptochrome(クリプトクロム)というカラーリングを選択。個人的にアウターにこういった色を選ぶことが今まで無かったが、このカラーが実に感じ良い。
街や山で視認性の良いグレーという印象でありながら、落ち着いた感じ良ささえ感じられる。アークのカラーリングは原色に寄らず、こういった絶妙な色使いが特徴な部分も、毎シーズン楽しみになる所だ。
始めはネイビーにしようと考えていた。着てみるとかなり上品な色使いでかなり気に入っていたが、アウトドアで使用するパックがグリーンベースな事が多いため、親和性のありそうなグレートーンを選択してみた。
ARC’TERYX ZETA Sl ジャケットをなぜ購入した?
僕は以前も記事にしているが、BETA LTを購入している。こちらは山と街兼用の目的とし購入し、3層ゴアテックスファブリックの程よい厚みが気に入っている。
ミッドレイヤーをしっかり選べば、春や秋だけではなく真冬も越せそうなので、本当に購入して良かったと感じている。
それにも関わらず、ZETA LTを購入した理由としては、携帯性と程よい生地感の厚みが理由に上がる。
BETA LTにはこの携帯性は無く、急な温度変化がある場合でも脱ぐかベンチレーションで対応するしか方法が無い。
そういった事はわかっていたが、やはり更に気軽にアウトドアでの環境変化に対応でき、バッグに気軽に入れることの出来るレインウェアが欲しいと感じた。
その点とにかくZETAは薄い、重量も310 gと軽量で,バックパック内で簡単に持ち運びが可能だ。
とにかくバッグ内に1着忍ばせておけば、おおよその環境変化には対応するできるくらいの便利さを持っている。
そして生地感が適度にソフトな為、本当に気軽に着用できる感じが嬉しい。
BETAも適度な張り感と立体構造のカッティングによる動きやすさがあったが、やはり運動性はZETAに軍配があがる。
これから迎える梅雨、山では雨や天気の急変が増え、街では人混みや電車内での不快感が増してくる。
そういった季節を迎える前に、BETAで感じたアークテリクスのシェルが持つ良さを、違うタイプのウェアで感じてみたかった。
加えて、これまで長く着用してきたThe North Faceのクライムライトジャケットと使用感が似ており、比較している人も少なかった為、単純に好奇心として使用してその善し悪しを比べてみたかった。
この比較記事は、後日アップしていきたい。
ARC’TERYX BETA LT ジャケットを実際に着用してみた
まずは前身ごろ。
シャツ1枚の上から着てみた様子。かなり気軽に着られて、気持ち良い。どんな環境にしても、この1枚があるか無いかでは行動範囲も変わってくるのではないだろうか。
ARC’TERYXはアウトドアユースだけでなく、タウンユースとしての便利さも名高いが、このZETA SLはまさにその代表とも言えるプロダクト。
BETAは着用している安心感が高かったが、ZETAは持っておく安心感がある。
背面も野暮ったい広がりを感じない。アークテリクスのプロダクトは、このスマートなシルエットが個人的に好みだ。
街中でもスマートに見せてくれるので、どんなウェアにも親和性が高い。
街中で歩いている人が着ているのを見ても、何だか気持ちよい。ついつい目で追ってしまう。
加えて今回選んだカラーリングが、実にアーバンスタイルに合ってくれる。どこか洗練されていて都会的であり、定番のブラックとはまた違った落ち着きのある特別感を演出してくれる。
続いて各部を紹介していく。
首周りはパリッとしていて、襟を立てて風を防ぐのが気持ち良い。
こういった首周りの守られる様な感覚はソフトシェルには無いので、コンパクトなレインウェアとしてはかなりアドバンテージが高い部分。
ストームフードも大きさは充分だ。梅雨時期でもしっかりと活躍してくれそうで、とても心強い。
当然頭頂にあるドローコードを引いて、顔周りにフードを集める事も可能だ。
ソフトシェルの場合こういった部分も柔らかすぎる仕様が多いが、ZETAはパリッとした印象で心強い。
首周りの保護感はBETA程ではないが、こういった感じでネックラインとフェイスラインをしっかり覆ってくれるので、春先の強い風や秋口の急な天候変化には上手く対応してくれそうだ。
続いて袖回り。ベルクロはこういった感じで細めな作り。袖口も太すぎず細すぎずでちょうど良い感じが取り回しやすい。
ジャストサイズを選んだが立体構造を採用しているので、腕周りなどの細い部分も締め付けが無く動きやすい。
ただ若干僕の場合は、首周りがタイトに見えた。キツくはないが、こういった部分的なサイズ感が人によって異なるので、試着は重要だ。
中央のジップは止水ジップになっているが、BETA LTの物とはやや異なっている
脇下にベンチレーションは無く、スッキリした印象だ。こういった部分は着やすさにも影響してくる。有り無しは好き好きあると思うが、アウトドアでの使用想定であれば、やや残念な部分か。
続いてポケット。低めの丁度良い位置。自然な姿勢でポケットに手を入れる事が出来る。こちらも同様に止水ジップだ。
続いて腰周り。ZETA SLの腰周りは他のシリーズに比べ、前と後ろの長さの差がより大きな物になっている。
ZETAは前がかなり短く、後ろがすっぽりと尻が隠れるカッティングだ。
前からはスタイル良く見せることができ、カバーしにくい背面はしっかり雨風から守ってくれる仕様だ。
もちろんドローコード付きで絞る事も可能。
以前購入したBETAとはまた違う着心地なので、用途に分けてしっかり使い分けできそうな点が良かった。
ZETAは真夏以外であればシーンを問わずオールシーズン使えそうだ。これからの梅雨時期にもぴったりだし、荷物が多い場合でもかさばらないコンパクトさがやはり嬉しい。
アークテリクスを使ったことが無いユーザーや、いきなりハードシェルテイストの1着は選びにくい…といった様なユーザーがまさに手に取りやすい1着。
アウトドアテイストに1つ感じよさを加えてくれるようなジャケットなので、普段アウトドアファッションを着る事の少ないひともコーディネートに取り入れやすいと感じる。
ARC’TERYX ZETA SL ジャケットに感じた 今一つな部分
今回購入するにあたって、事前に把握していたZETA Slの今ひとつだと感じた部分について紹介しよう。
因みにこのデメリットを感じても、メリットの方が多いと思い購入に至った。
2.5層にしては高い価格
ZETAは3層ゴアテックスではなく、2.5層のゴアテックス仕様だ。内側はコーティングが施されているが、ある程度の年数で劣化し剥離してくる危険性がある。
これは2.5層の宿命ではあるが、3層に比べて耐久性が弱いジャケットに対して、この44000円という価格は、個人的には微妙に高い気がしている。
確かに使いやすさはあるが、アークテリクスの魅力といえば考え抜かれ洗練されたデザイン。10年経ってもどんなボトムにも合うといった思想もあるだけに、3層に比べ早いタームで寿命を迎えてしまうのは残念だ。
この価格が使いやすさやスペックに対して高いとは思わないが、寿命という点に関して言えば、3層で比較的長持ちするクライムライトジャケットを購入するという選択肢も有り得る。
長持ちさせたいのであればレイヤーを良質な物にして、なるべく内側のコーティングに汗や皮脂の負担を与えない事だ。
尚且つ洗濯においては手洗いや陰干しが望ましく、脱水は劣化の原因となる。
モノを愛する気持ちで適宜メンテナンスやケアができる人であれば、長く使えるプロダクトだろう。
1年を1万円以下という価格で着まわせるのであれば安いものだが、個人的にこの2.5層での価格といった観点では、やや考える部分ではあった。
ゴアテックスの性質を理解していない人
山と街両方で使えるといった様なイメージが強いZETA SL。
確かに山で使えるのだが、ベンチレーションがない部分は仕様としてやや物足りない。
そういった所が無いシンプルなスペックが良いという見方もできるが、個人的に運動中にダイレクトに空気循環できる機能が欲しかったというのが、正直な所だ。
しかしベンチレーションが加わることで、4万円強の価格帯になるのであれば、致し方ないのかもしれない。
因みにゴアテックスが撥水透湿性に優れているという事は広く知られているが、勘違いされがちなのが透湿のスピード。
常に内側の湿度を外に排出してくれる訳ではなく、ゴアテックスが機能を発揮するには、まず内部が蒸れる必要がある。
なぜならゴアテックスは、ファブリック内外の水蒸気圧差が生じないと機能しない。
つまりファブリック内の蒸れを解消するには、1度ファブリック内を「蒸らす」という矛盾した工程が必要になる。
そしてその湿度がウェア外に配されるには、時間がかかる。つまり不快な時間をある程度経なければ、透湿の快適性を得ることは出来ない。
ゴアテックスであれば常に透湿され、快適が約束される訳ではないのだ。
その際に有利な仕様として、ウェア内に若干の空気循環機能を果たしてくれるベンチレーションだ。
ベンチレーションがある事で体感的には快適に過ごせ、尚且つ発汗などの自然な蒸れが時間をかけてウェア内の湿度を上げてくれ、ゴアテックスが良質な機能を発揮してくれる、という理想的な透湿効果を得る事ができる。
ではジップを空けて歩けば良いのでは?と思うだろうが、晴れている際や街であれば勿論それも良い。
しかし雨天環境による登山で体を濡らすことは、絶対に避けなければいけない。なぜなら水が体につくことで体温を奪い、体力低下や事故に繋がるからだ。
なので勿論多くの人が述べているように街でも山でも使えるという部分は間違っていないが、そういったデメリットもあるという事を知った上で購入するのが正解だ。
的確なタイミングや環境を把握した上で、山での運用するのが望ましいと個人的には思っている。
満足した買い物や良質なプロダクトを長く大切にしたくなる気持ちを生む事に繋がってと感じる。
人と被りたくない人
これは個人的なイメージなのだが、アークテリクスを好んで使用しているユーザーは、街で見かける始祖鳥のロゴにどこか目がいってしまう。
例えば自分がユニクロや無印良品の990円Tシャツを着ていて、街で同じ洋服を着ている人とすれ違っても、被ってるくらいにしか感じないだろう。
なぜならこれらは価格が安価で、被りがちだからだ。
アークはノースフェイスやPatagoniaに比べて着用している割合が低いため、差別化に有効と言われる事が多い。
しかしこのZETA SLは大人気ジャケットであるが故に、とにかく街で着用している人をよく見る。そしてカラーはブラックが定番。
どのブログ記事や紹介動画を見ても、決まってブラックが出ている。
今回購入した直営店で聞いた話でも、ブラックカラーのLより上は、どこも品切れだそうだ。
そう、他ブランドと差別化して購入したジャケットの筈が、結果的に人と被ってしまう事が多いシリーズなのだ。
そういった部分につまらなさを感じ、今回珍しいカラーリングを選んでみた。
通常の服選びであれば常にブラックやネイビーを選ぶ僕が、珍しくアークテリクスに関してはニュアンステイストのカーキやらグレーを選んでいる。
ZETAと言えばブラックなのかもしれないが、街で人と被ってしまう可能性が高い面には、覚悟しておいた方が良いかもしれない。
汎用性抜群のポケットブルジャケット
という事で今回ZETA SLを着用して感じた点を紹介してみた。
ポイントとしてまとめると
・ソフトシェル感覚で使える薄さと軽さ、バッグに入れておきたいジャケット
・街や野外でも使える汎用性の高さで、季節を問わず活躍の場が多そう
・アークテリクスやシェルを着用した事がないユーザーも、手に取りやすい機能性とデザインが優秀
という印象を受けた。
妻からすれば「またその鳥のやつ?」と、同じような鳥のマークのジャケットを何着も買う僕の気が知れないだろうが、用途やシーンによって使い分けたりするのも、面白いと思う。
夏場以外は活躍する事必死なので、ぜひ一度チェックしてみてほしい。
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