Mr.Children 『I LOVE U』愛の皮を被った日常賛歌

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こんにちは、kumaです。

 

前回までのPOP再検証シリーズを見てくださった方々!ありがとうございます。

今回は『I LOVE U』についてです。

 

www.housework-kuma.com

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実は、このアルバムが唄っているのは『愛』だけではないんですよ!

 

これを見れば、もう一度このアルバムを聴きなおしたくなる筈です!

 

今日は

 

『Mr.Childrenが好きなら絶対知ってほしい。
彼らのPOPミュージックへの挑戦 I LOVE U編』

 

楽しんでいってくださいね!

『I LOVE U』
01. Worlds end
02. Monster
03. 未来
04. 僕らの音
05. and I love you
06. 靴ひも
07. CANDY
08. ランニングハイ
09. Sign
10. Door
11. 跳べ
12. 隔たり
13. 潜水

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衝動が生む愛

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このアルバム『I LOVE U』のテーマに挙げられるワード『愛』『欲望』『衝動』

アーティストとして違った角度から物事を見せる事を表現したかったと桜井さんは語っています。

この頃の彼はまだ音楽的なエゴであったり、自身の望むものに対して音楽を作る気持ちも持ち合わせています。


『Mr.childrenだから鳴らすことのできる音』これがモチベーションとなり、衝動的な曲が生まれていきました。


アートワークや内省的な楽曲群からは簡単に手を出しにくいイメージを持たれがちな本作。


桜井さんはこの作品を当時、最高傑作と評していました。
しかしその後、なかなかファンに理解されなかったとも話しています。

 
本作の歌詞を見ると、未来や希望や様々な愛についての描写が描かれており、一見Mr.Childrenが常に歌っている内容になっています。


にもかかわらず、理解されなかったというのはどういう事でしょう。



この作品は表層的には大きな愛で括った表現をしています。
しかしその中身は『私小説の要素を込めながら、音楽とリスナーと自分への愛を表現した文学的な作品』と、私は感じています。



そして最終的な着地点は『シフクノオト』と同じく『ありふれた日常の肯定』です。



愛という大きなテーマを歌っているのに、何故日常が関係してくるかって?


その理由を、少しずつ紐解いていきましょう。


愛の皮を被った日常賛歌

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この作品のタイトルは『I LOVE U』ですが、当初の候補として『DOORS』という物が有力でした。

しかしタイトル的に暗いというイメージを持たれるのを避けるため、聞き手がわかりやすい方の『I LOVE U』に落ち着きました。


と、言う事は。

どちらかと言うと、伝えかったメッセージは『愛』より『扉』の方になります。


扉といえばこのアルバムには『Door』という曲がありますね。


この曲が一つのポイントになってきます。
   

 

『Worlds end』

PVの冒頭、二人の男女が広い浜辺の前で立ち尽くしています。その表情は心なしか曇っています。

波に流されていく。世界の果てを思わせる浜辺。

ここはワールズエンド『世界の果て』の様ですね。


演奏が始まると、閉ざされた箱のような空間で歌う桜井さん。
絵的に、ここは閉ざされた空間の様な閉塞感暗さを感じます。

次々と切り替わる画面に映る日常的な物体。
トマト、縫い糸、ニンジン、カレンダー、本、ぬいぐるみ


先程の男女は何かを探しています。物を探しているのか相手を探しているのか。
女性の手が握っているのは、先程冒頭で波にのまれていったでしょうか。
 

花はこの暗い空間の対比として、美しく希望のある物。謂わば願いの比喩になっています。



この映像には
手にしている花→and I love you歌詞カードの花
物語内で結ばれる靴ひも→靴ひも
積まれている本→僕らの音

アルバム楽曲の象徴がいくつか登場します。

つまりアルバム楽曲と今起きている事象は何らかの形で繋がっている事が想像できます。



二人がいる世界には、同じ様な格好をした人々が多く映ります。
同じ方向に歩き、電車に揺られ、単純な労働や行動を繰り返す姿。


女性は本を読み漁り、何かを知ろうとしています。周りにはたくさんの花が落ちているのに、それには全く気づくことなく。


男性が花に気づき女性の机にそっと置き去っていきます。女性がそれに気づくのはだいぶ後になってからです。


ゴミ袋が無造作に転がる暗闇の部屋。
この世の中が辛く息苦しいことを暗示しています。

その中で男女はお互いを探し合い、遂に出会うことができます。



人々が単純作業を繰り返す中で出会い、大切な物(花)を共有し外の世界が開きます。


二人は外の世界に走り出します。


しかしその風景は、冒頭に出てきた花が流された海岸。




一体どういうことでしょうか?





ここで一つの考察ができます。

何も変わらない日常や同じことを繰り返す毎日。


そんな物に嫌気が差し抜け出しても、結局理想と思っていた物とは違う世界が待っていた。
日常で大切にしていた願いや微かな希望も、ただの理想でしかなかった。

こんな暗示が描かれている物語と考えられます。



そこで『Door』です。

この曲で主人公はこう歌っています。

そのドアを開けてくれ そのドアを開けてくれ
もう何十回もノックして ノックしてるよ

居留守をつかってんのなんで知っているよ 開けてくれ
そのドアは重くて 立て付けが悪くて
ギシギシと嫌な音がする それも知ってるよ
でも入れてくれさえすれば そんなこと忘れさせるよ


主人公が外の世界に出る為に必死で訴えています。
けれど向こう側から何も返答はなく、鍵も見つかりません。

主人公にとってドアは嫌なイメージしか無いようです。

このドアはひょっとして ひょっとしたらひょっとして
何の喩えでも象徴でもメッセージでも無くて
開いたって昨日と同じ 生活が待っていたりして

ドアを何の例えでも象徴でもなくてと歌っているので、『ドア』は物質的な隔たりで無いことがわかります。
心の中で隔てられている何かです。



先程アルバム楽曲の象徴が出てくると書きましたが、ここで一度頭から流れを追ってみましょう。
 


『Monster』

この曲では主人公が狂った愛情を吐露し叫んでいます。歌詞だけを見るとかなり不安定な状態です。

彼女は「カナリヤ」人目に触れたがらない メモ帳の中にだけ存在している
聴かせてくれたことはまだ無いが きれいな虹色の声で歌うよ

主人公にはお互い愛し合っている人ではなく、一方的に愛している人が存在します。

歌詞内に相手の感情や言葉は存在せず『一方的な相手への愛と自己愛』が描かれています。

Knock Knock 誰かいますか?入れてくれますか?
Knock Knock お気づきですか?あなたもモンスター
さぁどんな叫び声をあげようか?

そして何度も『ノックノック』と叫んでいます。
自身の心の中に何か扉がある様です。




『未来』

名前もない路上でヒッチハイクしている 膝を抱えて待ってる
ここは荒れ果てていて人の気配はないし 誰もここを通らないや

進入禁止だってあらゆるもの拒絶して 追い払ったのは僕だから
誰も迎えに来ない ちゃんと分かってるって だけどもう少し待っていたい


主人公が孤独を感じている様子が描かれています。

独りよがりな思いや愛情が、周りの人を遠ざける結果となってしまいました。

女が運転する車が止まって 「乗せてあげる」と言った
僕は感謝を告げて 車のドアを開いて助手席に座って また礼を言う

しばらく走ると僕は 固いシートに居心地が悪くなって
女の話に相槌打つのも嫌になって 眠ったふりした

やがて女性と出会う事ができますが、暫くすると居心地の悪さを感じます。
自分が勝手に思い描いていた理想とは違っていたのか。

はたまた自分の頭で考えていた物より現実はずっと遠く、手の届かない物だったのか。



この歌のサビには1番、2番、最後と、3回『僕ら』という言葉が出てきます。
個人的に1番と最後は写し鏡や潜在的なもう一人の自分との事を表し、2番は相手の事を表していると思います。

生まれたての僕らの前にはただ はてしない未来があって
それを信じていれば 何も恐れずにいられた
そして今僕の目の前に横たわる 先の知れた未来を
信じたくなくて すこしだけあがいていみる

 

自分でこのままではいけないとわかっている。
けれど進むことができない。そんな主人公の葛藤が表れています。



『僕らの音』

I Like… I Love… I Love…落ち葉 噴水 自転車 犬
耳をすませば聞こえる すべてが愛を歌ってる

名作と呼ばれる作品を観たり聞いたり 読みあさったりして
大人を気取って少し無理して暮らした


背伸びをして身近な物から遠く望む場所へのヒントを得ようとしても、何もみつかりません。

身近な物はこんなにも愛で溢れているのに、自分は一番近くにいてほしい人の事すらどう愛せばよいかわかりません。


『and I love you』

君には従順を 僕には優しさを
互いに演じさせて 疲れてしまうけど
それでも意味はあるかい どう思う?
今も欲しがってくれるかい?僕を

自意識の中で独りよがりな感情が出ています。
まだMonsterのままなんです。



『靴ひも』

靴ひもも結ばずに 駆け足で飛び出して
停留所を通過してく そのバスに飛び乗って
あぁ一秒でも早く君の待つ場所へ

相手への想いを伝えようと奔走する様子が描かれています。

スーパーの前の歩道に 主人を待つ雑種の犬
ガードレールに繋がれている
君に微笑んで欲しくて 吊り革握っている僕と
どこか似ている そわそわして 

ガードレールに繋がれているのは、自分がどこにもいけないと心理的にわかっているから。

愛しくて 苦しくて そして自分を見失って

独りよがりな愛を伝える事しかできない自分を認められないでいます。


『CANDY』

多くの事を求め過ぎて 出来るだけ側に居たくて
そんなことしてる間に 息が詰まる
大抵 人は こんな感じで大事なもんを失うんだろう
そして凝りもせず 君を欲しがってる

恋が実らず自我が苦しんでいます。
独りよがりな愛情では相手に何も伝わらなかったのです。



『ランニングハイ』

甲「理論武装で攻め勝ったと思うな バカタレ!」
乙「分かってる 仕方ないだろう 他に打つ手立て無くて」
甲「威勢がいいわりにちっとも 前に進めてないぜっ」
乙「黙ってろ!この荷物の重さ 知らないくせして」

向こう側にいる内面とドッチボール
威嚇して 逃げ回り 受け止めて 弾き返す

向かい鏡に写る自分と対峙しています。
『向こう側の内面』は自身の心の中だからです。

『もう疲れた誰か助けてよ!』
そんな合図だしたって 誰もみていない
ましてタイムを告げる笛は鳴らねぇ

疲れたと叫んでも周りには誰もいません。
こんな事になるのは自分でもわかっていたのに。

あれっ 俺ッ 何してんだろう?
忘れた 分からねぇ
太陽が照りつけると やけに後ろめたくて

そして気付きます。何してるんだろう。
お日様が嫌いなトビウオは、自分の心と向き合えていませんでした。

他者や世の中のせいにして、自分を正当化してきた主人公。ようやくここで愚かさに気づくことができます。



未来でヒッチハイクをしていた自分はここにいます。

いつかこの僕の目の前に横たわる 先の知れた未来を
変えてみせると この胸に刻みつけるよ
自分を信じたなら ほら未来が動き出す
ヒッチハイクをしてる 僕を迎えに行こう

『Sign』

届いてくれるといいな 君の分かんないところで 僕も今奏でているよ
育たないで萎れてた 新芽みたいな音符(おもい)を
二つ重ねて 鳴らすハーモニー

「ありがとう」と「ごめんね」を繰り返して僕ら
人恋しさを積み木みたいに乗せていく

歌詞から相手を思いやる気持ちが伝わってくる言葉の一つ一つ。
独りよがりな表現や愚かさはもうそこにはありません。



ありふれた、僅か、仕草

日常に溢れる感情や出来事の一つ一つこそが、愛しいと気づき始めたのです。

周りにある小さな愛を知ることで、初めて自分と相手を愛することができる様になる。


『Door』

主人公は気づきます。

このドアはひょっとして ひょっとしたらひょっとして
何の喩えでも象徴でもメッセージでも無くて
開いたって昨日と同じ 生活が待っていたりして


ここを超えても向こう側の世界には何も無いのではないか。
自分が理想としていた世界や出来事なんて待っていないと知るのです。


自分が望んでいた物なんて実は虚構で、身近にあるこそが本当に望んでいた物と認識します。

扉は無いと気づいたんです。


この曲ではドアを開けてくれと部屋(PVの空間)から叫んでいるハズなのに、後ろからは車の音や微かな雑踏の様な音が聴こえてきます。

外の音を曲に入れる事で、初めから内と外など無かった事を表しています。


そしてアルバムの歌詞カード

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左の写真は部屋の中で鬱屈とした表情を浮かべる桜井さん
右の写真は恐らく部屋の外に出た写真でしょう。メンバーは同じような顔をしています。

何も変わらないという事を表しているのでしょうか。



『跳べ』

変わんなくちゃ 今日で終わりにしなくちゃあぁ
毎回誓い立てるけど 一向に標的へと進んでる気がしない

腰痛と片頭痛抱えてる 家庭環境も良くは無い
そんなネタを楯にして 逃げてばかりで

自分の弱さを認めた主人公。

跳べ!向かい風に乗って
「どうせ出来やしない」と植え付けた自己暗示を 引っこ抜いて呪縛を解け!
カーペットの上 ソファーの上
思い立った瞬間 そこは滑走路 跳べ 跳べ

自分と向き合い、心理的な強制を解き開放する。

ここでは飛べではなく跳べという言葉を使っています。
場所を移動するのではなく、負の自意識からの開放を意味しているからです。


『隔たり』

たった0.05ミリ 合成ゴムの隔たりを
その日君は嫌がった 僕はそれに応じる

相手の要望や気持ちを読み取り、応じる人間性を持っています。

UFOなんて信じない 神様も僕と関係ない
だけど目には見えないものを 僕ら抱きしめる

UFOや神など盲信する物はもう心にない。
遠くにある理想や望みではなく、近くにある愛を学んだからです。


『潜水』

バラバラに散らばったパズルが 床でふて寝している
恨めしそうだけれどどうしようもない

どれが元通りの形かは もはや知りたくもない
これはこれで結構芸術だ

日常に散らばった様々な出来事は一見雑多だが、よく見てみると意味を持っていてそれこそが美しい。

無造作の中に潜んだ意識を知ろう
赤 白 青 黄色 そうだ冷えたビールを飲もう
金と黒のラベル選んで 出来るだけ一息で
あぁ あぁ あぁ あぁ 生きてるって感じ


冷えたビールという典型的な日常の風景こそが、何より愛すべき事で幸せな事。

想像で考えていたカナリヤが歌う虹色の声ではない。
迷いながらがむしゃらに走り抜けた玉虫色の衣装でもない。

身近に転がっている単純な色にこそ意味がある。

こんな日常こそが、素晴らしく美しい。
「生きてるって感じ」自分の存在を感じられる。



シフクノオトのDVDのインタビュー。
桜井さんはライブについて『ちっぽけな日常こそが素晴らしい、そんな事を持ち帰ってほしい』と話しています。


誰もが他者に認められたいと願う人生。

自分の身近な物を肯定する事で、優しい愛を見つける事ができるというメッセージが込められています。


自身の人生の経験も踏まえ、エッセンスとして私小説的に作品に流し込み、一人の人間の物語として昇華させる。

こういったMr.Childrenの作品は、個人的にはこの『I LOVE U』が最後の様な気がしています。




他者への愛

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このアルバムをひっさげたドームツアー。
ここはリスナーと直接通じ会える空間。

自分たちの音楽への愛。
聞き手への愛。
様々な愛を、音楽にのせて私達に届けてくれます。


『ラララ』

ちっぽけな縁起かついで 右足から家を出る
電車はいつもの街へ 疲れた身体を運ぶ

昨日とは違う世界 あったっていいのに 僕も欲しいのに

日常で誰もが思うような一場面、心情を表現した『ラララ』
ドームという広い空間でも、そこには一人ひとりに届く音があります。


太陽系より果てしなく コンビニより身近な
そんなLaLaLa そんなLaLaLa
探してる

とてつもなく大きくて、皆に必要とされる近しい存在。そんなポップミュージック。

一人の生活者として飾らずリスナーに寄り添った『シフクノオト』
そんな曲たちを届けてきた彼らだから意味のある風景になる一幕。


『蘇生』

そう何度でも何度でも 僕は生まれ変わって行ける
そしていつか捨ててきた夢の続きを

暗闇から僕を呼ぶ 明日の声に耳を澄ませる
今も心に虹があるんだ

何度でも何度でも 僕は生まれ変わって行ける
そうだ まだやりかけの未来がある

これから変わっていく自分たちを鼓舞する様に言い聞かせる希望の唄。
新しい自分を認めたその先には、きっと君と行ける最高の場所が待っている。

オーディエンスと繰り返されるコール&レスポンス。
自分たちのエゴを唄ってきたこれまでとは違う。愛のあるオーディエンスとの対話だ。

最後にCD音源には無いアレンジで静まり返る場内に向けてこう歌う。

「君は生まれ変わっていける」



『Worlds end』

飲み込んで吐き出すだけの単純作業
繰り返す自動販売機みたいにこの街にボーっと突っ立って
そこにあることで誰かが特別喜ぶでもない
でも僕が放つ明かりで 君の足元を照らしてみせるよ きっと きっと

自分には歌う事しかできない。
日常で感じた事を歌に替えるだけの日々。
音楽の力でその人の人生を変える事なんて思いあがってはいない。
けれど常にあなたの側に寄り添った存在でありたい。

「誰が指図するでもなく 僕らはどこへでも行ける
そうどんな世界の果てへも 気ままに旅して廻って」

暗闇に包まれたとき 何度も言い聞かせてみる
今僕が放つ明かりが 君の足元を照らすよ

何にも縛られちゃいない だけど僕ら繋がっている
どんな世界の果てへも この確かな思いを連れて

自分で檻を作っていた世界から抜け出し、自己肯定への旅路へ。

失敗を前提にした言い逃れを引っこ抜き、滑走路から跳ぶ。呪縛を解く。

つまらない成功にしがみついた、過去に繋がれた命綱を離し自由を掴み取る。
そこには自分だけでなく、同じ場所を目指してくれる存在と共に。


田原健一の印象的なフレーズが鳴る間奏を終え、最後のサビ

「気ままに旅して廻って」と歌詞を叫び、オーディエンスに向け最大限に両手を広げドームを見渡す。

「君も一緒に飛んでくれ」という気持ちを音に乗せたその動きは、Mr.Childrenという虚像から君と一緒に飛び立ちたいという強い意志。

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この流れでお気づきかと思いますが

『ラララ』→独りよがりだった過去の曲、生活者として同じ目線にいるよというサイン

『蘇生』→虹(Mr.childrenとしての憧れの比喩)や未来を目指すことができるという決意。

『Worlds end』→聞き手の側に寄り添い、一緒に向かうべき所へ飛んでほしいという願い。

一人の小さな人間とドームという広い空間。過去と未来。私とあなた。

多くの二項対立を表し、歌い手と聞き手が一緒になってほしいという彼らの意思が表れています。


自己のエゴに囚われるのは終わった。
私たちはこれからあなたたちの為に唄う、一緒に唄ってほしい。

愛という普遍的な物の中に、自分たちのポップミュージックの意思と願いを込めたライブは続きます。


『Hallelujah』

どんなに君を想っているか 分かってくれていない
どうやって君を笑わそうか 悩んで暮らしてるDAYS
君に逢う前はALONE きっと独りでした
霧が晴れるように 路を示してくれるよ


『Hallelujah』は『Q』を代表する曲の一つ。尊い人への愛情を唄った曲です。
しかし今のMr.childrenが唄うのはあなたへの歌。
独りよがりなエゴで生きていた一人の時代から変わり、このライブでは聞き手に寄り添った愛情へと昇華されています。

僕は世の中を儚げに歌うだけのちっちゃな男じゃなく
太陽が一日中雲に覆われてたって 代わって君に光を射す
優秀に暮らしていこうとするよりも 君らしい不完全さを愛したい
マイナスからプラスへ 座標軸を渡って 
無限の希望を 愛を 夢を 奪いに行こう 捕えに行こう


Mr.childrenの楽曲はいつ唄っても、何一つ色褪せる事を感じさせません。
それは時代に囚われず、誰の心にも響く普遍的な事を一貫して唄い続けているからに他なりません。


『and I love you』

未熟な情熱を 何の保証もない明日を
信じて 疑って 足がすくんでも
まだ助走を続けるさ 今日も
一緒に超えてくれるかい 昨日を

もう一人きりじゃ飛べない
君が僕を軽くしてくれるから
今ならきっと照れないで
歌える 歌える 歌える

I love you
and I love you
and I love you

自分たちの挑んでいる物はとてつもなく大きい存在。
それでもあなたとなら超えていける。
昔は斜に構えて無表情で唄った歌も、今なら心からの笑顔で歌うことができる。


『Hallelujah』からの『and I love you』
社会、戦争、経済、宗教、人種。
様々なテーマを映した映像を超えて、『愛』という無形の物を唄った彼ら。

大きなスケールで世間へと提示したそのテーマは、このドームという場所で確かに一つの実を結びました。

歌い手と聞き手という音楽を通した関係は、ポップミュージックから生まれた一つの『愛』へと昇華し、また『日常』へと戻っていきます。


「今まで僕は人に評価されたいと思うことがものすごく恥ずかしかったんですよ。人に評価されたいと思うのは、すなわち自分に自信がないからであって、他者がそれを認めてくれることで自信を持てればいいと思うことで、自分が自信のないことを認めることになるから…でも、ああもっと歌うまくなりたいって自分が思っちゃったことでいろんなことを気付かされたんですよね。人から評価されたいと思った自分を認めなくちゃダメだなあって。」
SWITCH 2005年1月号 桜井和寿発言より引用

自己嫌悪に陥っている人間は、何をしていても楽しくありません。
自尊心が無い状態では、見える景色すべてに意味を見いだせなくなるからです。


彼は病に倒れ、自分の周りにある小さな物への大切さを改めて感じられようになりました。
だからこそ、音楽やリスナーへの愛を真っすぐに吐き出すことが出来るようになったんです。



全ては自分を認め、愛する事から始まるんです。

あなたはどんな愛を思い浮かべ、このアルバムを聴きましたか?

【Mr.Children】桜井和寿が「I LOVE U」で聴き手に理解を求めたのは愛や衝動ではない?考察から紐解いていく、この作品のもう一つのイメージとは。

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