クマログ

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【Mr.Children】 POP再検証の始まり『IT'S A WONDERFUL WORLD編』

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こんにちは、kumaです。


今日はひさびさのMr.Childrenの話です。


『IT'S A WONDERFUL WORLD』

Mr.Childrenが好きな方ならご存知のこのアルバム。

ここから、彼らの長きに渡る自分たちとの闘いが始まりました。


Mr.Childrenが好きなら絶対知ってほしい。
彼らのPOPミュージックとの向き合い方 POP再検証への挑戦編』




『IT'S A WONDERFUL WORLD』
01. overture
02. 蘇生
03. Dear wonderful world
04. one two three
05. 渇いたkiss
06. youthful days
07. ファスナー
08. Bird Cage
09. LOVE はじめました
10. UFO
11. Drawing
12. 君が好き
13. いつでも微笑みを
14. 優しい歌

『IT'S A WONDERFUL WORLD』とは?

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Mr.Childrenの10枚目となるオリジナルアルバム。
デビューに合わせた2002年5月10日にリリースされた作品。

前年の夏にMr.Children 1992-1995』Mr.Children 1996-2000』という
2枚のベストアルバムをリリースしスタジアムツアーを行い活動として一区切り付いた後のオリジナルアルバムという事で期待も高かった。

このアルバム発売後に夏から29公演のホールツアー。
そして秋から10公演のアリーナツアーと、アニバーサリーイヤーに相応しいような年になる予定だった。

しかし桜井さんの病気により中止となり、復帰後に横浜アリーナ一夜限りのコンサートを行うにとどまった。ファンには衝撃であり、記憶に残った年だったのではないでしょうか?


作品について

前作のオリジナルアルバム『Q』から約1年半という歳月が経ち、また違った仕上がりとなっている今作。

『Q』が音やディレクションに関して実験的記号的なアプローチであったのは印象的であるが、今作『IT'S A WONDERFUL WORLD』はどちらかというと優しさ冷たさ、人間の欲求や社会への皮肉を唄った人間的な要素が強い1枚となっています。


ファンの間で名盤の1枚に挙げられる事が多い作品であり、その流れは秀逸です。
小林武史が「ノイズからの再生」をテーマに掲げ作曲した『overture』からの『蘇生』。

このノイズが具体的に何かを言及はされていませんが、恐らく前年に起きた9.11同時多発テロの悲劇や、音楽界においてもデジタル化が急激に発達した世界を憂いての物かと個人的には考えています。

そのためこのアルバムのテーマである「ああ、世界は素晴らしい」という肯定とも皮肉とも取れるワード。
どちらも内包した考えを吐き出し、互いを理解した上で「それでも、前に進んでいこう」というMr.Childrenがこれまで訴え続けてきた物を作り続けていく決意表明なのではないでしょうか。


このアルバムから彼らの俗にいう 『POP再検証』 がスタートし、自らの音楽に対する挑戦が続いていきます。

彼らが今後POPSAURUSという存在と闘っていくのか、はたまたその存在自体に成れるのか。

優しい歌 忘れていた 誰かの為に
小さな火をくべるよな
愛する喜びに満ちあふれた歌

優しい歌 歌詞より引用


自由にバンドサウンドをやる、という決め事を掲げて活動をした『DISCOVERY』~『Q』この間に確実に彼らの音楽とは別の所で、新たな音楽シーンの波が日本を席巻しました。

Mr.Childrenはもう終わった」不倫や活動休止で離れた人たち、メディアからはそんな声も聴こえていた頃。

逃げる事を選ばず、自分たちの音楽と向き合った勇気。 

自らが作り上げてきた音楽を一度取り込み再解釈した上で、混沌とした世界に向けPOPミュージックの強さを提示していくという姿勢。
新しいものが常に求められていた音楽の世界で、この強く困難な挑戦はここから始まりました。


アルバム発売、ツアー中止

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満を持してリリースされたアルバム。プロモーションを続け、新曲『Any』をリリースした直後にその出来事は起こりました。

ボーカル桜井和寿の小脳梗塞発症

音楽界に限らず、大きなニュースとなりました。

死ぬっていうことのイメージが、自分がいなくなる、家族ともう会えなくなるっていうことの怖さですよね。
そういうことがすごくリアルに…死ぬイコールそういうことだから。

SWITCH 2003年1月 インタビューより引用

今までも何度か意識していた『死』という漠然とした物。
それが一番近い距離にリアルな物として近づいた瞬間でした。

当初は初日のみ振替との楽観的な見方だった状況。しかし結果はホール、アリーナ両公演が全て中止。

彼らは一旦活動の停止を余儀なくされます。多くのファンが驚きを隠せない事態でした。


私もこの頃の事を鮮明に憶えています。7月が特にいつもより暑く、テレビを付ければ『Any』と病気の話。
その頃はまだ若く「これからMr.Childrenはどうなるんだろう」そんな単純な心配しかしていませんでした。
あれからもうすぐ17年が経とうとしていますが、今も彼らの音楽が聴ける事に感謝をしながら毎日を過ごしています。


そして季節は秋に移り、年末に横浜アリーナでの一夜限りのライブが行われることが決定。

奇跡の一夜となった公演。雨の日にも拘わらず、チケットを持っていなくても『彼らに会いたい』という気持ちを持って
多くの人が横浜アリーナに集まりました。

再生の光、歓喜の夜

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静かに『Dear wonderful world』から始まったコンサート。
桜井さんの声が会場に響くと共に、多くの歓声が上がります。

『CENTER OF UNIVERSE』の頭で聴こえるJENのカウント。思わず女性たちが感嘆の声をあげます。
それがいつもの黄色い歓声ではない事はこのライブの意味を知っていれば誰もがわかります。

そう、皆が待っていたんです。
「おかえり」と。

このイントロで響く会場の手拍子。誰もがこの時を信じていたからこそ過ごす事のできる時間です。
自らを鼓舞するかの様にシャウトするボーカルの声。それに応えるオーディエンス。

『NOT FOUND』では本調子ではない筈なのに、声を張り原曲キーを唄う力強さ。
シンプルにただ力強い演奏と唄が胸を打ちます。

名もなき詩』でオーディエンスに唄わせる桜井さん。それを自分で確かめるように一つ一つを噛み締める表情。
このコンサートの一つのハイライト。


『乾いたkiss』~『つよがり』の流れ。
単なるブレイクダウンのスパンではなく、バンドとしての演奏を聴く時間。

個人的に『乾いたkiss』で田原さんが弾くフレーズやバッキングがたまらなく好きです。
しっとりとした曲ながら、クランチサウンドで聴かせる演奏。
『pieces』や『ロードムービー』の様なミドルテンポながらも、バンド感を感じることのできる曲が好きですね。


続くMCでは本当に今では考えられないくらいすべります。笑
まだこの頃はディスカバやQの頃の人間性を引きずっています。
どこかで俯瞰していたり、強がっていたり。
このコンサートが彼の中で大きな一つの出来事になっているんだと、今の彼らの活動やコンサートを見て感じます。

元々ホールツアーをやるのも、リスナーとの距離感を考えての発案だったそう。
自分の緊張を放ち、少しでもオーディエンスと近づきたい。そんな微笑ましいジレンマがにじみ出る様子です。


『君が好き』~『youthful days』では誰もが聴きたかった愛やポップスを唄い、会場もそれに応える。
『ファスナー』『Bird Cage』では内省的な人間の苦悩する有様を表現する。

この二面性こそがMr.Children振り幅の広さであり、誰もがその世界観に引き込まれる所ですよね。
『Bird Cage』のJENのドラミングが素晴らしく、本当にこういう時の姿は惹かれます。


そしてクラップの打ち込み音とアコギのストロークの音、がデジタルイメージを表した映像と共に会場を取り囲む『ニシエヒガシエ
数々のコンサートで演奏されてきたニシヒガの中でも、このツアーの演奏は個人的に好きなアレンジ。
2番で入ってくる田原さんのリフが会場を一気に盛り上げる。

続いての『LOVEはじめました』

LOVE はじめました 毎度毎度のことですが
LOVE はじめました 去年よりおいしくできました
LOVE はじめました そいつで大人になりました
LOVE はじめました あぁ お口に合いましたか?


アルバムCMにも使われたこの曲は、彼らのPOPを皮肉った表現とこれからの決意表明を表すフックの効いた曲。

こういった社会派の曲で観客を一度突き放す手法が明確に出始めたのは、POPSAURUS~このON DEC辺りからなのではないでしょうか?
2番終わりのナカケーのベースソロ、中盤の田原さんがかき鳴らすギター。最高に尽きます。


『ALIVE』『終わりなき旅』『光の射す方へ』
今の彼らだから出せる音。鬱屈としながらも一歩を踏み出す力。
前に進む事を自らに言い聞かせるようにストロークを重ね、歌い上げるその姿。
生きることを体現した演奏に見入り、体を揺らす観客。

『終わりなき旅』も演奏回数が多い曲の一つですが、個人的に一番好きなのはこのテイクです。派手な演奏や演出が無くても、歌の力一つで十分。何よりもそれを感じさせてくれます。

ニシエヒガシエ』~『光の射す方へ』の5曲って、今考えても結構すごい流れだと思います。


一度暗転してから桜井和寿のギターから流れたのは『虹の彼方へ』
メンバーに提案した物の、直前まで何度も反対されたそうです。

ですが次の『Any』のイントロが鳴った瞬間にきっと間違いじゃなかったと多くの人が感じたのではないでしょうか?
作詞途中は、まさか自分の描いた歌詞に励まされると思わなかったと本人が語っています。

過去の象徴的な曲からこそ『今』という物が響いてくる歌詞と見える景色。

今僕のいる場所が 探してたのと違っても
間違いじゃない いつも答えは一つじゃない
何度も手を加えた 汚れた自画像にほら
また12色の心で 好きな背景を描きたして行く

そのすべて真実

Any 歌詞より引用


『いつでも微笑みを』
曲の最後に観客を優しく巻き込もうとする彼の姿は、もうこのライブを心から楽しんでいる心情が表れています。
もう少しでこの時間が終わる事を皆がわかりつつ、この曲を迎えます。

『overture』~『蘇生』
イントロのギターストロークから会場は一つです。

何度でも 何度でも 僕は生まれ変わって行ける

この歌詞が表すように、この後に行われるツアーでも何度も演奏されました。
自分たちのPOPミュージックを信じ続ける為に。強さを証明する為に。

このアルバムにおいて一番大切で、意味のある曲。
オーディエンスとのレスポンスでその力を感じた彼らが自信をつける事ができたからこそ、その後のアルバムたちが生まれたのではないでしょうか。


『It's a wonderful world』
そしてアルバムを総括するこの曲でコンサートは完結します。
醜くも美しい世界だからこそ、感じる事ができる喜びがある。本当に素晴らしい作品です。


『HERO』
印象的なイントロから始まった、誰もが待っていたこの曲。

メンバーが今日一番思いを込めて、演奏して唄ったであろう熱量が伝わってきます。


彼らの音楽を聴き、今日の奇跡の様な一夜を過ごしたから見える景色。
アルバムやツアーという物を超えた、人生の話。

全ての経験や出来事には意味があって、今が在る。

残酷に過ぎる時間の中で
きっと十分に僕も大人になったんだ
悲しくはない 切なさもない
ただこうして繰り返されてきたことが
そうこうして繰り返していくことが
嬉しい 愛しい

奇跡の一夜を超えて

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特別な年、アルバム、病気、一夜限りのコンサート。一連の出来事を見て、私が感じた物。

アルバムは本当に完成された作品で、今何度聴いても飽きないという事。
耳を澄ませて聴いてみると、フレーズや音の一つ一つに毎回新しい発見がある。
いつまでも色褪せない作品。


そしてもう一つは、このツアーは不完全であり、作られた物ではないという事。

アーティストと一人一人の人間が共有できた、ノンフィクションという時間。
曲を超えた所に見える景色こそに意味があり、伝えられるべき出来事。

実際もう少しツアーをやって、しっかりした物を形として残そうという案もあったそうです。
だけど結果として、この一夜限りのドキュメントだけが残った。

こんな気持ちになるとは思ってもみなかったくらい感動しています。

終演の際に桜井さんが観客に伝えた感謝。
この言葉が全てだと思いました。


私がMr.Childrenを好きな理由に一つとして、一人の人間の人生を見ている様な感覚になれる所があります。
この出来事はその最たる例だと思う。曲を超えた所で大切に感じることができる物を貰える。自分の人生の一つとなる。

今日も、彼らのPOPミュージックが聴ける何気のない毎日に感謝。

www.housework-kuma.com

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