【Mr.Children】DISCOVERYがロックな作品であるという誤解と真実

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こんにちは、kumaです。

 

私はこれまでMr.Childrenのポップ再検証後の活動について、考察をしてきました。

インタビューや歌詞を深く読み取る事で、真意の追求や再発見をする為です。

 

ここでふと考えたのが、ポップ再検証以前はどうだったのか?という事!

 

そこで私の好きな、『DISCOVERY』と『Q』も掘り下げてみました。

 

今回は『DISCOVERY』についてです。

 

『DISCOVERYがロックな作品であるという誤解と真実』

 

『DISCOVERY』
01. DISCOVERY
02. 光の射す方へ
03. Prism
04. アンダーシャツ
05. ニシエヒガシエ
06. Simple
07. I’ll be
08. #2601
09. ラララ
10. 終わりなき旅
11. Image

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深海からの願い

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どこへ行ったんでしょうねえ、ほんとに。
もう、ひたすらミュージシャンとしての自分が夢だったんで、だからもう夢みたいなものがないですよね。
ていうか、もういらないっていうか。
だから「夢をなくした人は淋しい」とか言うけど、淋しくとも何ともないって思いますね、僕は。
そんなことよりも、一生懸命に毎日を生きていくことの方がよっぽど大変だし、よっぽど意味のあることだと思いますね。

ROCKIN’ON JAPAN 1997年6月号 桜井和寿インタビューより

活動休止に入る直前のインタビューで、自身の夢や希望について桜井さんはこう語っています。


音楽産業のみならず、社会現象となった『Mr.Children』という存在。

だけどツアーをやって休みが近付けば近付くほど自分達が疲れてるっていう事に気付いて『早く休みたい、早く休みたい』ってそればっかり考えてたんですよね
ROCKIN’ON JAPAN 1999年1月号 桜井和寿インタビューより

当時の彼は駆け抜けていた時期について、こう語っていました。
神経はどこかで確実に麻痺しながら、スター稼業を背負う。


Atomic Heartからの3作品。
100万枚のセールスという虚像を夢見た、無垢な歌い手。
自らの成功や希望の願いを虚像に投影し、音楽という産業で消化をしてきた聴き手。

ある意味で完全に満たされた構図。
そんな両者の関係性に変化が訪れました。

彼は世間や聴き手を拒絶し、自らの殻に閉じこもっていきました。


活動休止。


今までMr.Childrenは様々な物を吸収し、虚像を世に見せる事で存在を保ってきました。

愛、希望、争い、世界情勢、絶望、虚構、…


そんな様々な要素を経て、活動再開後にリリースされたアルバム『DISCOVERY』

取り入れてきた外的要因ではなく、自らの深層心理にある音や感情を探しに行こう。

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荒野の採掘場のアルバムジャケットが表している様に、自身を掘り下げていくという事がテーマのこの作品。


重く暗がりな歌詞カードの中には一枚だけ、光のノイズでぼやけた中に写る白い鳩の姿が。

彼らが願う希望は、音の中に隠されているのでしょうか。


揺れ動く心の狭間で

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様々な作品を生み出したこの25年間という感覚で計れば、DISCOVERYはどちらかというと掴みづらいイメージがあるかもしれません。

あるいはロックな作品というイメージ。


ロックな作品?果たして本当にそうでしょうか。


ロックとポップという言葉。
知れば知ろうとする程に深く大きい言葉です。

それは単にCDショップのコーナー分類や、音楽サイトの画面上に写るジャンルを表す言葉ではありません。


ではなぜロックと感じるのでしょうか?

『ニシエヒガシエ』の様に、世の中に不満を響かせるギターサウンドがあるから?
『#2601』の様に、激しくストレスフルな叫びがあるから?


確かにこれはMr.Childrenの中では、サウンド的には『ロックっぽい』音かもしれません。
けれど彼らが鳴らしているのはポップミュージックです。

大衆に向けた希望の音楽です。

『CMの15秒間で聴き手に刺さる音楽』を作る自分に嫌気がさしても
『ミスチルっぽいイメージ』という対峙しなければならない大きな存在があっても


Mr.Childrenの音楽は、人々の願いであり希望。
だから彼らは自分を見直して、ポップミュージックを肯定し向き合ってきた。

それが『IT’S A WONDERFUL WORLD』からのPOP再検証という、越えなければならない壁でした。


このDISCOVERYも同義です。

深海という底を見た男が自らを見つめ直し、いかに人間らしさや生きる喜びを取り戻すか。

これが、この作品を構成している重要な要素です。


終わりなき旅という曲を一つとっても、同じことが言えます。

この曲はサウンドがロックな訳ではありません。

絶望を経験した人間が、目の前の壁を乗り越える様
25年トップを走ってきたバンドが、常に新しい事に挑戦し続ける様


私たちの胸に、歩みを進めるようなエモーショナルな音を刻みつける。

これがロックなんです。


ロックンロールは『揺れながら転がる』という意味を持っています。


Queenの『We Will Rock You』という曲は、『お前たちの心を揺さぶって動かしてやる!』という内容ですよね。


単に激しい音や、世の中に不満を訴えるのがロックではありません。


自身の中にある『揺らぎ』を信じ、柔軟に進む心の在り方。
そして生き方こそがロックだと私は思っています。

困難に立ち向かい、決して自分に負けないしなやかな精神性。

だからロックの精神は、時代を超えて愛される生き方なんです。

揺れ動く心の狭間で
一筋の光に 手をかざすけど
時代はいつでも急ぎ足で
生きて行くことの意味は
争い合う事に いつかすり変わっていく

彼らは自分を見つめ直していました。
揺れ動く心を確かめ、光の射す方へ進む術を探して。


プロデュースされるという流れに乗り、美しい虚構という絵を描くのではない。
これは自らの手で少しずつ足していく、粘土細工の様な作業。

自分たちが鳴らす音によって、深海の苦しみを自浄する。
そんな力を持った、光に向かった作品なんです。


だから、自分たちで鳴らす音が単純に楽しく心地よい。

互いの音に共鳴し、時には不協和音が響く。
Prismの様に、不協和音さえも作品の良さに変えてしまう様なパワー。


メンバー4人が中心となって作り上げた、肉体的な音。
そこにジャンルの枠組みは無く、心の中に存在する本質的な物が形になった。

これこそが、DISCOVERYを作り上げています。


I’ll be there

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世間に復活を宣言できる曲。
そんなきっかけを、彼らは探していました。


候補に挙がったのは『I’ll be』
当初はI’ll be thereという仮タイトルでした。

小林武史さんの『疾走感があるポップこそMr.Childrenの復活にふさわしい』という意見に対し、桜井さんは納得をしていませんでした。


Mr.Childrenが始動のきっかけとして、キャッチーな音を提示する。

これはつまり、虚像としてマーケットに凱旋したというイメージに繋がります。


ここでMr.Childrenがマーケットのど真ん中に戻っていけば、また同じ事の繰り返しになるのではないか?

prismでは『自分に嘘を付くのが段々上手くなっていく』と心情を吐露しています。


この時の彼はキャッチーだったり、構築されたものに嫌気がさしていました。

そんな唄を再始動のきっかけにはしたくない。


だからこそ自分の内から自然に湧き出る『言葉』は、しっかりと噛み締めて歌いたい。

大衆用のイメージに悩んでいた桜井さんに対し、もっと素直に書いてもいいという小林さんのアドバイスがあり、歌詞が完成。



大衆用のポップとして、爽やかで突き抜けていく様なアレンジがされたシングルバージョン。
自らの思いをひたむきに、熱量を持って表現する事に意味があった、アルバムバージョン

この二つに分かれ、全く異なる顔を見せる事になりました。


コンサートでは一貫してアルバムバージョンしか歌っていません。
楽曲を聴くと、メロディに対し丁寧に丁寧に言葉を込めて歌っています。

これは桜井さんの中で、何か大切な思いが曲に込められているからかもしれません。

同じように内省的な『深海』はもう一人の自分(苦しみから脱する為の虚像)に連れて行ってくれと願っています。

しかしこの楽曲の主人公は違います。
逃避するのではなく、生きている自分を証明する為に飛ぼうとしている。

そしていつだって I say yes.
I’ll be there

僕はここに存在している、と。


桜井さんは元々、命を削りながら歌を唄うミュージシャンです。
この楽曲をコンサートで唄う彼の様は、当にその姿そのもの。


自分の内を探る様にギターの音を確かめながら唄う。
弱さを認め、強く在る事ができる心を求めながら。
そんな自分を突き動かす様に叫ぶ様。


『自分を探す』というアルバムのテーマを体現した様なこの楽曲。

私は大好きな一曲です。


その先にある光を求めて

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アルバムの骨格を作る為、彼らは制作を進めました。
I’ll beが重要な曲である事は間違いない。

けれどあともう一歩、何かが足りない。

I’ll beが内なる自分のマインドを表現しているのであれば、その自分を希望へ導いてくれる何かが。


モノを作っていくという作業の中で、僕たちが常に感じているのは、ふたつの相反するものの中に
―例えば緩⇔急、明⇔暗、公⇔私、清⇔濁 etc.―
常にはさまれているということだ。
 
リアルであればあろうとする程、僕達はその中を行き来し、ゆれていく。
けっして的(まと)はあざやかに見えてはこない。

ミスチルと一緒に音楽を作っていると、その両極のものに、ある時はふり回され、楽しんだりするのだが
ふとした時に、ど真ん中に的(まと)は現れ、そこを矢がつらぬいていく様な快感を感じる。

その痛いほど胸がキュンとする感じがやめられなくて、僕らはかれらとかかわっているのだと思う。
TOUR ’99 DISCOVERY パンフレット 小林武史コメントより


光の射す方へは、そんなベクトルを持った歌です。

そう、揺れ動く心の中にある的を探すように。


あの『innocent world』が生まれたヒルトンホテル。当時と同じ部屋で書き上げた楽曲。

本当にやりたい事を自分の中で探していた桜井が、初めて見つかった気がした。
そんな風に小林さんは当時を語っています。

桜井さんが自らの内なる世界から、純粋な音や欲望や願いを紡ぐその姿。

自己矛盾を抱えたリアリティに対し、圧倒的に突き抜けていく力を持った桜井さんの歌詞。
歌詞に深い意味は無いからこそ、その得体のしれない力がより強調されています。

まさにジャンルの枠に囚われない音。言葉では説明のつかないエネルギー。


楽曲自体の力もさることながら、この曲はコンサートで圧倒的なパワーを見せつけます。


サビを繰り返し観客と一体になり叫んだ後、圧倒的な音と演出と共に眩い光を放つメンバー。

アナログでもデジタルでも、ポップでもロックでもフォークでも、洋楽でも邦楽でもない、
でも本質というものが…それがある意味「光の射す方へ」ができた瞬間に、あ、これだと思えた…

SWITCH 1999年3月号 桜井和寿インタビューより

それは散らかっていた点が集まり、真直ぐな線で結ばれた瞬間でした。


 

自分を取り戻す旅

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DISCOVERYのツアーはシンプルな舞台と演出で構成されています。

深海の様に虚像が見せる劇場型の演出ではなく、シンプルで力強く鳴らす音だけで今の自分たちを体現したいという思いからです。

今のコンサートであれば、アートワークを施しクリエイターの想像力豊かな演出をする。

そんな見せ方をして、聴き手それぞれの心に寄り添うコンサートをしているでしょう。

ファンの人の気持ちをあんまり考える事はないですけども
ROCKIN’ON JAPAN 1997年6月号 桜井和寿インタビューより

しかし当時の彼らがすべきだったのは『自分を取り戻す』という事。

負を背負った虚像から、自分の生き方を取り戻す大いなる旅。


これこそ自身の中に揺れ動く心を、体現しているロックな姿に他なりません。


さぁ 目に写る 全てのことを 抱きしめながら

ざあざあ降りの雨を 全身で受けながら

心配ないぜ 時は無情な程にに 全てを洗い流してくれる

全てを受け止めた者が持つ強さ。

アナログとデジタル
深さと広がり
コンセプチュアルとベスト

『深海』と『BOLERO』という二つの作品で、聴き手が作り上げた虚像のピークに終止符を打った。

光の行く先を知った彼らが、これから進んでいく道。

終わることの無い様に思える長い自分探しの旅は、どんな結末を迎えるのでしょうか。


それは彼らが鳴らす音だけが、知っています。

 

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