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【Mr.Children】夢と現実。両極の可能性を全ての力を使い聴き手に投げた大傑作!『REFLECTION 第一部 限りない欲望編』

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こんにちは、kumaです。


結構昔に書いた記事ですが『REFLECTION』のコンセプトや主題について紹介しました。

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しかしこのアルバムはそんなシンプルなテーマでは終わりません。
Mr.Childrenが聴き手へと『可能性』を全て投げきった、大傑作になっているんです。

それには前回の記事でお伝えした『[(an imitation) blood orange]』の解釈。

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つまり『夢』『現実』
そして今回新たに提示される『欲望』というものが、超重要な鍵となります!


『REFLECTION 第一部 限りない欲望編』

全てに反射する光

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まずこのアルバムを考察する上で重要なポイントを先にお伝えしていきます。


・『夢』『現実』『欲望』が重要な要素になっている

・宗教や哲学的観念が取り入れられている

・震災で弱さを見せ、夢に逃避しながらも希望を提示した、桜井さんからのメッセージ


まず、桜井さんは前作[(an imitation) blood orange]で夢に逃避していました。

その夢は消化できたのかと考察しましたが『REFLECTION』を聴いていくと、まだ夢の中にいる事がわかります。
そんな夢から抜け出し、希望の夢へと姿を変えた作品がこのアルバムです。

そこには『夢』『現実』
この両極を知ったアーティストだからこそ、表現できる作品になっているのが大きな特徴なんです。

『REFLECTION』の良さは楽曲の幅広さだけではありません。

歌の内容でさえも『希望』『現実』『夢』『欲望』と、まさに全方位に全力投球をした傑作。


そして宗教や哲学からの引用。
桜井さんは自身を宗教家や哲学者ではないと、未完ツアーのMCで発言しています。

しかしそのイメージからできた楽曲や、今までの活動にヒントは多く表れていました。


・『Q』のタイトルは当初『Hallelujah』

・辛い際に手塚治虫ブッダを読み、まるで天から言葉が降りた様に歌詞をつけた『ALIVE』

・ライブで『愛の反対語は無関心』と、宗教からインスパイアされた考えを話す

・女性器の構造を解説した本を読み、時代や宗教観によって人にどう捉えられてきたかを学ぶ

・esという人間の根源的な欲求や自我を知る。


この人は天才であり努力家でありド変態です。


だからあの歌詞を書けるんです。

立場は全く違う筈なのに、何故聴き手の気持ちがこんなにもわかるのか。


それは人間の根源的な考えや欲求、精神を学び調べあげた上で感情を乗せているからだと思います。

だから私たちの琴線に触れるんです。


欲望への気づき

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私がREFLECTIONのテーマの一つに気づいたのは『FANTASY』の一節からでした。

昨夜(ゆうべ)見た夢の中の僕は兵士 敵に囲まれていた
だから仕方なく7人の敵と吠える犬を撃ち殺して逃げた

夢の中で何故囲まれたのか?7人の敵と吠える犬とは?


これのヒントはツアーの冒頭に演出される映像にヒントがありました。

結論から言うと、7人の敵とはキリスト教の考え方で登場する7つの大罪を表しています。
そして、犬はギリシャ神話に登場する『冥界の番犬ケルベロスです。


7つの大罪とは?』
人間を罪に導く『傲慢』『憤慨』『嫉妬』『怠惰』『強欲』『暴食』『色欲』の欲望です。
誰の中にもある感情ですね。この感情が引き金になり、人は罪を犯すという考えです。


ケルベロスとは?』
神話では冥王ハデスが住む館を守っている番犬です。
この映像では主に7人の欲望に仕えているイメージでしょうか。

映像で暗がりに光る豆電球。ケルベロスは太陽の光を見ると狂乱し力を失います。
だからかアイマスクの様な見た目の物をつけています。



映像作品のパッケージでは塔の周りを7人の男が囲んでいます。
そしてジェットコースターで下る男女を見て、たじろいでいます。

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これが何を意味するか?


7つの大罪はそれぞれの欲望であり、ツアーのオープニング映像で表されています。


・7人の人間たちが食卓の上で銃、原発、紙幣が皿の上に乗った料理を凄い勢いでむさぼり食う様子
・人間たちを見ると、ドロドロと渦巻いた中に様々な種類の欲望が映し出されている

つまりこの7人はあらゆる欲を表しています。


やがて暗い世界から画面が引きます。
女の子の目の中から場面が変わり、電車の中が写ります。

女の子は車内で座り、車窓の外にはビルの景色。
行き先は『日常』と書いています。先程の不穏なシーンとは異なる景色です。


しかし周りの人をよく見ると気付きます。
何食わぬ平然とした顔をしていますが、心の中に欲望のイメージが見えます。

女の子はそれに気付き、怯えます。


自分の心の中を確認する様に、現実の世界から夢の様な世界に行こうと念じます。


するとそこは、先程の欲望たちがいた不穏な空気の景色。

そう、目の中に映っていた男たちがいた世界。
それは女の子の心の世界でした。(いわゆる誰の心にもある幻想)


そして何やら螺旋状の塔が見えます。


女の子はジェットコースターの様な乗り物で、緩やかに登っていきます。

欲望の姿をした人の形をした物が、ベルトコンベアで奈落に落ちていきます。


その様子を見る女の子。
すると、それに気づくかの様に男の子がこちらに走ってきます。

男の子に気付いた途端、ジェットコースターは勢いよく下り始めました。


下りながら欲望の姿をした人を吹き飛ばしていきます。すると紙幣など、欲望を表した物質が散っていきます。

女の子は強い眼差しを持って下っていきます。


そこからオープニングの『FANTASY』に繋がる。


これは何を表しているのか。


男の子を歌い手(Mr.Children
女の子を聴き手(観客)と仮定します。


映像作品のパッケージや夢の様な景色に出てきた塔。
旧約聖書に出てくるバベルの塔です。

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螺旋状の道も、コースターの線路として表現されています。


バベルの塔とは?』
人間たちは自分たちの強さや技術、他者とは違うという事を誇示する為に欲望の象徴である高い塔を作ります。
その傲慢さに神は激怒し、人間たちの言語をバラバラにした。
人間はコミュニケーションが取れなくなってしまい、結果的に各地へ散って行った。

という話です。


自分たちの力を過信し、欲望のままに進んだ人間の末路が描かれています。


バベルの塔は完成していません。つまり未完の塔ですね。
バベルの塔が高くなる=欲望が結実し強くなるという事です。

だから女の子は、始めに自らの心の中を確かめた際(欲望に問いかけてみた)少しずつジェットコースターで登っていました。


しかし男の子に気付き、そこから急降下していきます。

塔の下に降りていく。つまり欲望とは逆の方に向かおうする意志です。

ライブ本編では、FANTASYのサビに入る前に一瞬演奏がブレイクし、ジェットコースターの走る音やスモーク越しの映像が流れます。

これは聴き手(女の子)に『これから音楽の世界(空想)にあなたは入る』というサインです。

ライブは『日常』では味わえないワクワクがありますよね?『非日常』の世界です。


歌の中で物語は進み、男の子(歌い手)が7人の男と犬を撃ち殺します。

これはつまり、欲望に染まる事なく打ち勝つ意思を表しています。

『Starting Over』は歌い手(Mr.Children)が自我と向き合い乗り越える歌なので、同じ事が比喩されています。

男の子(歌い手)は女の子(聴き手)を蜘蛛の巣から助け、手を引いて走り出します。

蜘蛛の巣にはアルバム内の楽曲に出てくる様々なキーワードを表す物体が纏わりついています。

これは物質という欲に縛られる日常から、開放してくれるという事。


そして『さあ旅立とう 日常の中のファンタジーへと』といってライブの幕は開けるんです。


ここで一つ抑えるべきポイントがあります。

この歌(アルバム)は『現実』『夢』『欲望』が大きなテーマになっていますが、そのどれもを否定する着地はしていません。

桜井さんは夢と現実の両極の面を知ったからこそ、このテーマを掲げているんです。


これを押さえつつ、考察を続けます。

日常の中のファンタジー

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ここで一旦『FANTASY』の歌詞について、踏み込んでみます。

ゴミ箱に投げ捨てたFANTASYをもう一度拾い上げたら
各駅停車をジェットコースターにトランスフォームして
[不可能]のない旅へ

こう歌っています。
ゴミ箱に投げたのは『(an imitation) blood orange』で力を失った夢。
私達が疲れ果てた日常に対する夢。というあたりでしょうか。

そして不可能のない旅へと言っています。
つまりここでは、現実ではあり得ない事も成し得る世界(夢)に行こうと訴えています。

「誰もが孤独じゃなく 誰もが不幸じゃなく 誰もが今もより良く進化してる」
たとえばそんな願いを 自信を 皮肉を
道連れに さぁ旅立とう

ここでは皆の願い事が歌われています。

世界が平和になったら…誰も貧しくなく幸せに暮らせる世界がくれば…の様な願い。
いわゆる皆が持つ共同幻想です。

そんな願いと自信を持つ。

しかしここで『皮肉を』と逆のイメージの言葉を使って、チクリと針を刺します。


ここで歌い手が訴えたいのは『夢への希望』だけでは無いことがわかります。

想像を超えた猟奇殺人さえ今や日常 ドキュメンタリー
いちいち心動かないよ 免疫ができ右から左

夢の様な(実際では考えられない)出来事も日常の中で通り過ぎていく。
もはや当たり前になり、何が現実なのかわからなくなる。

「事件(こと)の裏側」すら簡単に閲覧(のぞ)けてわかった気になる
でも本当は自分のことさえ把握しきれない なのに何が解ろう?

物事を簡単に調べる事ができ、現実で起きている事が何でもわかった気になっている。
皆が自分探しをするが、自分は何者かも答えられない。
現実の出来事の何をわかった気になっているのか。

夢に憧れている人間。自分が現実と思っている事だって、結果として夢と何ら変わりない。 

なぜなら、『何もわかっていないのだから』

「出来ないことはない」「どこへだって行ける」「つまずいても また立ち上がれる」
いわゆるそんな希望を 勘違いを 嘘を
IDカードに記していこう

1番と同じ表現が続きます。

希望を夢見て、わかった振りをして現実を生きる。
人は無限の可能性を秘めていて、不可能なんて無い。

けれど現実は『勘違い』や『嘘』に溢れている。
自分の周りで起きているモノ・コトすら実際はわかっていない。

多くを把握したつもりの『自分』を表す名刺(IDカード)を持って、自らを表現する事に価値はあるのか?という皮肉です。

昨夜(ゆうべ)見た夢の中の僕は兵士 敵に囲まれていた
だから仕方なく7人の敵と吠える犬を撃ち殺して逃げた

勝手気ままな夢を見る事は、自分の自由に生きる事。つまり欲望に素直という状態。

それが肥大したモンスターとなった時、自分自身に苦しむ事になる。

けれど欲望自体は悪ではない。純粋な欲望から希望や愛、音楽が生まれるのだから。
だから囲まれた自我を『仕方なく』殺した。

「僕らは愛し合い 幸せを分かち合い 歪(いびつ)で大きな隔たりも超えて行ける』
たとえばそんな願いを 誓いを 皮肉を
道連れに さぁ旅立とう
日常の中のファンタジーへと

けれど僕たちはそれを探しにいかなくてはならない。


夢と現実は表裏一体の存在。
どちらにも希望や絶望、そして欲望や可能性がある。

だからこそ、その可能性を想像しなければいけない。

これから、そんな日常の中のファンタジー(ライブや作品)の世界にあなた(聴き手)を連れて行く。

だから音楽で感じて、想像してほしい。
そんな歌い手(Mr.Children)からのメッセージです。


ライブでは頭に演奏される曲は
・FANTASY(日常の中の夢)
・ロックンロールは生きている(窮屈な日常から手を伸ばす)
・旅人(夢を追う旅人)
・fanfare(無限の可能性と自分を探す旅)

という風に『日常』と『夢』対比されたイメージの元、聴き手を物語の世界へと連れて行ってくれていますね。



このライブが終わる際のスクリーン映像にはこんな場面が映し出されます。


・二人でジェットコースターを下っていると宙を浮いて気が付くと元の電車に戻っている。
・そこには女の子だけでなく男の子の姿も
・車窓から見える景色がビルではなく、先程までいた夢の中の景色になっている


これはどういう事か?


自分たちが現実と思っている事でさえ、夢だったり、その一部なのかもしれない。
けれどそんな夢に溺れてはならない。


現実と夢。その中にある両極の可能性を想像し、大切な物を信じる心こそが大事ということ。

このイメージは『SENSE』で提示されていたメッセージと同じ。



[(an imitation) blood orange]』で夢に逃避した桜井さん。

REFLECTIONの次作品『ヒカリノアトリエ』ではこんな風に歌っています。

「雨上がりの空に七色の虹が架かる」
って そんなに単純じゃない
この夢想家でもそれくらい理解ってる


だからこそ夢の希望と危うさの両方を感じた者として、聴き手に伝えたい思いがあったのだと考えます。

次回は夢と現実、そして可能性が満ち溢れた楽曲の数々を考察していく『大空へ飛び立つ鳥編』でお会いしましょう!

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